次期総理の座を狙う大蔵大臣磯部の私設秘書・秦一毅の元お手伝い・池畑良子が殺された。ルポライターの母田耕一は政界の謎を暴こうと秦の身辺を探っていた最中の事件だった。母田は秦の内妻・青蛾が奇妙な手型占いで有名で、その的中率の高さから大物政治家や財界人が続々と訪れていること、さらに秦自身もこの占いによって現在の地位を得たという噂を聞きつける。青蛾の影を追い始めた母田は、後輩の事件記者・須藤に連れられて「ゆき子」という変わり者の美人ママが経営するバーを訪れる。母田はゆき子に強く惹かれ、マンションで密会するようになるが、やがて何者かに殺害されてしまう。 須藤は危険を承知で母田の調査を引き継ぎ、麻布にあったバーに占いの得意な「麗子」という女性がいたこと、そして青蛾の正体が麗子であることを突き止める。しかし、後に見せられた謎の占い師の写真は青蛾ではなく、ゆき子だった。さらに青蛾が惨殺されたとの報が入り、事態は急展開する。ホテル王・高橋佳哉から呼び出された須藤は、ゆき子と対面する。ゆき子は高橋に対し「母の仇」と告げる。 ゆき子の告白によれば、敗戦後の満州で高橋は妻と生き別れ、真弓という女性と関係を持ち赤ん坊を授かるが、その子はすぐに病死し、真弓は精神を病んだ。その後、高橋は元の妻と再会し真弓の前から消えるが、実は病死したと思われた赤ん坊は真弓に盗まれ、30年以上にわたって育てられていた。その赤ん坊こそがゆき子で、真弓から高橋への復讐を徹底的に教え込まれ、占いの能力を利用して青蛾を操り、高橋を誘い出そうとしていた。しかし青蛾が途中で気づいたため殺害し、計画は狂う。高橋から「真弓の実の娘ではない」と告げられたゆき子は、真実の残酷さに発狂寸前だった――。 母田の死、青蛾の殺害、そしてゆき子の復讐劇の裏に隠された運命の糸が絡み合う中、政界と財界の闇が浮かび上がる。
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